
夫が死んだときに嫁も生きたまま焼かれる風習がインドにあります。
このショッキングな風習がインドの「サティー」。
夫の死後の世界を保障するために生まれました。
この風習による残酷な事件も起きています。
今回はインドのサティーを紹介します。
サティーとはどんな風習?
インドに古くから伝わるサティーとは、夫を亡くした嫁が焼身自殺(生きたまま焼かれる)する風習のことです。
日本では寡婦焚死(かふふんし)と呼ばれています。
どのような儀式かというと、夫の葬儀の後に嫁が薪の山に乗せられて炎に包まれて殺されるというもの。
いつごろ始まったという記録は残っていませんが、一説によるとギリシアから伝わった風習だといいます。

画像:Wikipedia
サティーを描いた絵画です。火の中に亡くなった夫と嫁が描かれています。
Q.どうしてこんな儀式をするのか。
当時のヒンドゥー教では女性の人権が認められていませんでした。
夫が死んでも再婚は禁止、嫁の意思での離婚も禁止、その環境で女性が1人で生きていくことは厳しく、夫と一緒に焼身自殺を図るほうが美徳と考えられていました。
インドでは夫に尽くすことが嫁の義務であり、夫の死後も共にして愛情を注ぐ、そんな意味合いもあるそうです。
Q.強制的に焼き殺されたのか。
近親者から説得されて希望する人にだけ許可を与えたという説が有力ですが、強制的に焼き殺されたという事例もあります。
サティーは1829年に法律で禁止されましたが完全にはなくならず、現在でもサティーが行われたというニュースが流れるそうです。
サティーによる悲惨な事件が発生
1987年に悲惨な事件が起こりました。
当時18歳だったループ・カンワルという女性が夫を亡くし自らサティーで殉死することを志願しました。
遺体を焼くために積み上げられた薪の山に座り、夫の頭を膝に乗せて数千人の群衆が見守る中焼かれましたが、その後の捜査によりこの女性は焼かれる直前に大量の麻薬を飲まされていたことが判明します。
さらには火の中から悲鳴をあげて逃げ出そうとしていたが防止された、などの証言が報告されます。
ってことは、無理やり彼女を焼き殺したのでは?と思いますが、その通りでした。
この女性は死ぬ前に男児をもうけていませんでした。
インドでは男児がいない家庭で夫が死ぬと、財産の相続権を嫁が引き継ぐという慣習があります。
ですが、嫁がサティーを行って死ぬと財産は彼女の嫁ぎ先、つまり夫のほうに残ることになるそうです。
つまり夫の財産を目的に夫側の親族が無理やり彼女を焼き殺したということです。
この事件をきっかけにインドでは「サティー禁止法」が制定されました。
サティーの儀式に携わった人は死刑か終身刑、勧めようとした人には禁固1年~7年もしくは5年以下の罰金を科されることになっています。
インドでは未亡人は嫌われていた
ヒンドゥー教では未亡人は不吉なものとされています。
朝起きて最初に見るのが未亡人だとその1日は不吉な日になり、旅に出る時に道の途中で未亡人に遭遇すると延期したとも言われています。
さらには夫を自分より早く亡くすということは、前世で悪いことをしたからその罪であるという考え方もあるそうです。
つまり、夫に先立たれた女性は肩身の狭い生活を余儀なくされます。
サティーを行うことによって亡くなった夫の罪が浄化され、サティーを行わなければ次も女として生まれ変わるという言い伝えもあります。
女性の人権が認められていないインドでは、せめて来世では男性として生きていきたい、そんな願いがありました。
また焼かれて死ぬと天国で夫と3億5000千年生活ができる、夫を地獄から救済できる、こんな考え方も存在します。
このような女性の死生観からサティーという儀式が始まったのかもしれません。