
18世紀の帝政ロシア時代に「スコプチ」という秘密結社が存在していました。
いわゆるカルト宗教団体なのですが、何が変わっていたかというと信仰の証として自分の性器を切り落とすという過激な教団でした。
今回はこのスコプチの謎に迫ります。
カルト教団スコプチとは
18世紀のロシアに存在したスコプチはキリスト教の一派であり、このスコプチは「去勢された者」を意味します。
別名「去勢教」とも呼ばれていました。
去勢することがこの宗教の教義だったため、男性信者は自分の性器を切り落とすことによって自分が信者であることを証明していました。

画像:RUSSIA BEYOND
スコプチ教団内部の絵画です。
ではなぜ去勢をしていたのか?
スコプチの教祖であるコンドラティ・セリワノフは、この世の中の悪事や悪行の原因は人間の本能である性欲に原因があると考えていて、それらを根絶するには去勢以外に方法はないという考えを持っていました。(当時キリスト教では性欲を悪とする教えがありました)
性欲こそが犯罪を誘発させるということです。
ですが、去勢をすることによって純潔者になれるとは聖書のどこにも書いておらず、彼の極端な解釈がこの宗教をおかしくしました。
彼は「全人類に対して去勢を行う」という最終目標を揚げます。
もちろん教祖であるセリワノフ自身も1770年頃に去勢を行い、彼は自分を「キリストの再来」と名乗りました。
恐ろしい去勢の実態
去勢は男性のみではなく、女性も対象になっていて、彼女らは乳房や性器を切除されました。
手術にはハサミやナイフの他、熱した鉄の棒などが使われたといいます。(麻酔無しの手術だっため、どれほど激痛だったのかは容易に想像できます)
切除された部分は観衆の前で炎の中に投げ込まれるという儀式が行われました。
これを「火のパプティスマ(洗礼)」と呼んでいて、この儀式を行った人は真の信者になるというわけです。
つまり「去勢する」=「真の信者になれる」ということです。

画像:Wikipedia
去勢された信者の画像です。男性は性器が、女性は乳房が切除されています。
成人してから信者になった人は結婚して子供を作ってから去勢をしていたため、子孫が残せなかったことによる教団消滅はありませんでした。
中には去勢を恐れ逃亡する人がいましたが、捕まえられると強制的に去勢されるか、もしくは殺害されたといいます。
金融機関で働いている信者もいましたが、彼らはお金を貸す際にその人の睾丸を保証にし、返済できなかった場合は去勢させて無理やり信者にしました。
ロシア当局によって摘発される
最初は農民だけだったこのスコプチ信仰は拡大していき、ロシア帝国政府は動き出します。
1775年、教祖のセリワノフが逮捕されシベリアのネルチンスクで生活を送るのですが、そこでも彼は布教活動をし100人以上の信者を去勢しました。
いったん解放されて首都に戻るのですがさらに彼はスコプチを拡大させたため、1820年に再逮捕されます。
監獄に入れられて1882年に100歳で死亡。
他の信者は迫害を逃れるためにルーマニアへ行き、1872年「新スコプチ」創設します。
現地で勢力を拡大し、またロシアに布教しに行ってしまい、515人の男性と240人の女性が逮捕されてシベリアに送られてしまいました。
今現在はどうなっているのか?⇒1970年以降ロシアのトゥーラ州にそれらしき団体が存在するとのことです。