
2013年に山口県の集落で大量殺人事件が起きました。
ある1人の男によって加害者の家の周辺に住む高齢者5人が殺害されたこの事件。
犯人の自宅の窓には1枚の謎の張り紙が貼られていました。
「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」
これは何を意味するのか。そして彼はなぜ高齢者を殺す必要があったのか、この事件の謎に迫ってみます。
山口連続殺人放火事件とは?
2013年7月21日、山口県周南市金峰地区の郷で事件は起こりました。
この郷は8世帯(当時12人)が暮らす小さな集落です。
午後9時ごろ、住民から民家が燃えているとの通報が入りました。
火事になったのは貞森さんと山本さんの民家。距離は80メートルほど離れています。
この通報の数時間前にある男が貞森さん宅に侵入し、夫(71歳)妻(72歳)を木の棒で殴り殺していました。
犯人が次に向かったのは山本さん宅。同じく侵入し79歳の老婆を木の棒で殴って殺し、家に火をつけました。
3人を殺した後、火災で混乱している状況を利用してさらに近所の石村さん(男性:80歳)も殺害。
次の日、同じ集落にすむ河村さん(女性:73歳)は火事の様子を見に行き自宅に帰りますが、その時すでに犯人は2階の寝室に潜入していました。
寝室に向かった彼女は同じく木の棒で殺害されます。
12人の集落では防犯意識が低かったためたった家の鍵をかける人はいなかったといいます。
そのせいか犯人に簡単に家に侵入され、たった2日で5人が殺害されてしまいました。
山口県警は山の中に逃げた犯人の捜索を開始し、4日後に見つけて逮捕します。
林道沿いに座り込んでいる男性を発見し、「保見光成(犯人)さんですが?」と聞くと抵抗する様子なく「そうです」と答え、「殺害して火をつけた、私がやりました」と言ったそうです。
犯人の保見光成とはどんな人物なのか
犯人の保見は事件現場の金峰で育ち中学を卒業して上京しています。
東京では土木業の仕事に就いて最高月収は月200万ほどあり、貯金は1500万くらいだったといいます。(どのようにして月200万を稼いでいたかは不明)

画像:NAVER
逮捕される保見光成容疑者。
そして45歳の時に両親の世話をするため再び故郷の金峰に戻り、便利屋「シルバーハウスHOMI」を始めました。チラシを配って仕事を入れていたが月収は20万弱。事件直後は廃業状態でした。
趣味は自宅でのカラオケであり、スピーカーを家の外に向けて大音量で歌っていたと報じられています(住民からの嫌がらせの報復という説もあり)。十八番は「およげ!たいやきくん」だったそうです。
どうして犯行に及んだのか(殺害動機)
保見光成の両親は2004年に他界していて精神状態が心神喪失でした。
親を失ったことにより孤独感が膨らみ犯行に至っています。犯行動機は住民からの嫌がらせです。
当時の週刊誌によると、保見が住民から草刈り機を燃やされた、家の裏に農薬をまかれた、殺された貞森さんから包丁で刺された、など数々の被害を主張していたという。
次第に対立していた近隣住民との交流が少なくなり保見の精神状態も限界に到達します。
そして自宅の窓に謎の張り紙をはります。
「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」
事件当初もメディアで報道されましたが、彼は地下室の壁にも下記の内容の張り紙をつけていました。
「悪者にされてたまるか」「何かしなければ認めることになる」「がまんがまん」
おそらくこれを見る限り誰かに対して恨み憎しみがあるのだと判断できます。
保見は貼紙をつけた理由について「両親が亡くなった後に書いた。つらい気持ちで書いた。子供が日記で死ねと書くのと同じように」と語っていたという。
このような精神状態から彼は妄想性障害へと変わっていき、周りの住民が敵となりました。
そして被害妄想は膨らみ5人を殺害するに至ったわけです。
その後どうなったか(裁判)
逮捕から裁判開始まで2年かかります。
保見は最初の取り調べの段階では犯行を認めていましたが、妄想が膨らんで「自分はやっていない、殺したやつはおれは見た」と言い始めます。
さらには殺した山本さんに関しても「足をたたいただけ。ごめんなさいと謝ってきたので叩くのをやめた」と。
寝室で鉢合わせになった川村さんに関しては「眠くなったのでベッドの下で寝てしまった。すると川村さんが入って来たので足をはらった、おれは誰も殺していない」と主張しています。
山口地裁は第一審で死刑を求刑しますが、弁護側は心神喪失状態であったため責任能力はなかったと主張。
保見側は控訴しますが、5人の命を奪ったという結果は極めて重大であるという判決が下されます。
ですがこの判決は不服であるとし上告したため、まだ裁判は終わっていません。
今現在保見は広島拘置所に収監されています。